快感と不快感
勉強とは、強いて勉めるもの、楽しいわけはない。
学生の頃、それを聞いて妙に納得した記憶があります。
よほどつまらない思いをして勉強していたんでしょうね。
ただ数学だけは違いました。
なんだか楽しくてやっていました。
因数分解や数式の証明、sin、cos、Σ、∬、おもしろくってしょうがなかった時期がありました。
快感だったのだと思います。
たまにさっぱり手がかりが見つからず、何をやってもだめな問題がありました。それで強い不快感を覚えたことも数知れずあったと思います。
しかし、それが解けたときの喜びを知っているから、粘り強くやることもできたのだと思います。自慢ではないですが、私は小さい頃から根性も粘りもない方です(自慢になるはずない?)。
「下手の横好き」はこと数学、算数にはあまりあてはまらないかと思います。もちろんレベルにもよりますが。
たとえば数学者から見れば謙遜ではなく、私など「下手の横好き」レベルでもないでしょうから。
「好きこそ物の上手なれ」ですね。
特に子どもには有効です。
何度も書いていることとは思いますが、そうなっただけで私は「勝った」と思います。
算数を好きにさせてあげること、それが私の仕事で、合格はそのあとについてきます。
「算数は楽しい」、「算数は好き」、そういう気持ちを持った子はうそでも大げさでもなく、どんどん成績は伸びます。
そういう気持ちが持てないままでは、いつか低迷してしまいます。
また、そういう気持ちをいったん持ったとしても、それを上回る不快感があるとまた低迷してしまいます。
「強いて勉める」ことは大事ですが、不快感をこらえた先に快感がないと続きません。
お子さんの学力や性格によって様々でしょうが、「快感」と「不快感」のバランスが大事ですね。
百マス計算についての意見はこれまでに何度も書きましたので省略しますが、これのよさは明らかに、やればできるという「快感」をほとんどの子どもに与えられることです。
「お母さんにほめられた」「先生にほめられた」
これも貴重な「快感」です。
長々と書きましたが、実はここからが本題です。
子どもに与える問題のレベルについて。
昨今の入試問題を見るまでもなく「基礎・基本」をおろそかにしてはいけません。
学力は高い山にしていかなければいけません。
それには広く強い土台が必要です。
「だるま落とし」のように積み上げては、きれいに積み上げても限界があります。
いつか倒れてしまいます。
しかし一方で、土台ばかりでも限界があります。
たまにはよその高い山を見ることも必要です。あの高さに登るのだという目標が必要です。
また、一瞬でも高いところに登った経験があると、世の中の見え方が変わってきます。
そういった意味で、多少負荷をかけた問題を見せることも大事です。
もちろん、そればかりではいけません。それは「だるま落とし」になります。
さて、ここで話はつながります。
どの問題レベルまで、子どもに与えるか。
私の基準は「不快感」が「快感」を超えないまでです。
または「不快感」を通り越したらすぐ「快感」が得られるところまでです。
小学生が算数に対して、大人にはない抜群の理解力を示すことができる理由は頭の柔らかさだけではありません。
子どもは「解けないと不快である」ことに慣れていません。
「解けないと気持ちが悪い」、「わからないと気持ちが悪い」のですね、また、何でもわかるものだと思っています。そこが子どもの強いところだと思います。
「難しいから解けなくてもしょうがないか」と言う風になったらずるい大人の仲間入りですね。
そういう子には、また違う学習法を考えなくてはなりません。
ずっと維持することは難しいことですが、「算数って楽しい!」という気持ちを持ち続けさせることが一番重要で、また難しいところです。
解ける喜び、次に向かう意欲、その見極めが問題を与える側の力量になってきそうです。
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コメント
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ご無沙汰しております。小4の息子を持つゴンちゃんです。
時宜に遅れたコメントですが、今回のお話大変参考になりました。勿論、共感するところ多々ありました。
先生が仰るさじ加減は結構難しいのですが、家庭学習を中心にやっている我が家では、このさじ加減こそが私の楽しみでもあります。
これからも色んなお話聞かせて下さい。
投稿: ゴンちゃん | 2006年5月 3日 (水曜日) 01時03分
こちらこそご無沙汰しております。
そう言っていただけると光栄です。
「親子で楽しむ♪中学受験」楽しみに拝見させていただいています。
プロ顔負けの内容にただただ感心するばかりです。
ケンちゃんはまだ小4になったばかりなのでしたね。
書かれている内容から、つい上の学年と錯覚してしまいます。
このペースと仕上がりの様子で、小6の受験学年では、何を学習することになるのでしょうか。
今からひそかに楽しみにさせていただいています。
投稿: 賛数仙人 | 2006年5月 4日 (木曜日) 00時50分