サピックスの強さ その10
繰り返しになりますが、もっともらしいが故に、誤解がそのまま通用することが間々あります。
「教えない授業」が文字通り「教えない」で、教材を与えるだけで、学力が上がり、成績が伸びるとしたらそんな楽なことはありません。教えないことで伸びるのならば、面白げな教材を与えて、親も先生も子どもをほったらかしにしていればよいわけで、親も子どもも先生もみんなハッピーですね。もっともそれではほとんどの教師、講師が職を失いますが。
教材を与えるだけで伸びる子どもも中にはいます。しかしそれは多数ではありません。また、そういうごく少数の子どもは塾がどこであれ、教材が何であれ、自然とできるようになります。奇特にもゲームやマンガ、AKB、キャラクターよりも算数が好き、パズルが好きならば、それはほったらかしにしてあおっていればいいでしょう。
問題なのはそうでない圧倒的多数の子どもたちです。
算数や数学だけではないでしょうが、できるようになるステップは泳げるようになることや自転車に乗れるようになることと似ています。
初めからいきなり泳ぐことができたり、自転車に乗れたりする子もいなくはないでしょう。
しかしほとんどの者は、水に慣れ、浮き輪につかまったり、人に支えてもらったりで浮く術を覚える、補助輪をつけて走る感覚を身につけ、徐々に外していく、バタ足などで前に進む技を覚える、ブレーキやペダル、ハンドルを操ることを覚える、初めは水を飲んだり、倒れたり、苦労の連続です。そこで嫌になれば習得は遅れます。
人から直接習わなくてもできる子どももいるでしょう。しかし、それは興味を持ち、人が泳いだり、自転車に乗る様子をしっかり見ているからでしょう。「学ぶは真似ぶ」です。
手取り足取りは習得に時間がかかります。ひとは自分の力で得たもの、理解したものに執着し、喜びを覚えるからです。手取り足取りは人がやってくれたことで、自分でやったことと違います。
かと言ってほったらかしはこれまた習得できません。学習に試行錯誤は悪いことではありませんが、勝手な思い込みや間違いに気がつかないからです。
できるようになる人とは、上手を真似て、その先に自分の思考をプラスできる人です。講師は上手の見本を見せ、真似したくなるようにしなければなりません。
教える者の役割は、ある時は浮き輪、ある時は補助輪です。 ひとりひとりに合った適切な指導です。
苦労の先の楽しさを伝え、ひとりで走り出すまでそっと支える者です。
道を外れそうになったら進むべき方向に指針を示す者です。
主役である子ども達の名脇役である者です。当然ですが、決して講師は主役ではありません。
« サピックスの強さ その9 | トップページ | 115 »
「塾」カテゴリの記事
- サピックスの強さ その10(2013.06.19)
- サピックスの強さ その9(2013.06.12)
- サピックスの強さ その8(2013.06.05)
- SAPIXの強さ その7(2013.05.24)
- SAPIXの強さ その6(2013.05.16)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント